隔月刊 ジャズ批評 No.214 2020年3月号 に掲載されました!

この度、ジャズ批評、札幌のライブハウスくう、山本店主の連載する『北都市の猫たち』という記事に今回取り上げて頂きました。

くう山本さんとは昔から面識はあるものの、実は過去はそんなに深くお話したことが無く、ライブ出演もここ数年で増えてきた印象です。それもあり、札幌に越してきて10年になりますが、今回初めて取り上げて頂く運びとなりました。

私のジャズを始めた地元室蘭時代から、札幌越してきてからの約10年分をA5、1ページにまとめるのはとても大変だったと思います。くうさんは、終演後は割と早く閉めるので長く居座る事もなく、なかなか山本さんとも深く話す機会もありませんでした。(スペシャルライブの打上げなどでは結構喋るとか…?!) 

今年1月に個別にお会いして、インタビューを受けましたが、2時間ほどびっしり笑いながら話させて頂き、個人的には山本さんとゆっくりお話しできたのもよかったなーと。 

という事で、今回ジャズ批評を見て、もっと私の事を知りたいと思ってこのページまで飛んできて下さった皆さまへ、少しでも伊藤未央という札幌のベーシストを知って貰えればと思い、アーティストプロフィールには書けないような色々な話をさせて頂きます。 

これは現時点(2020/3)での話であり、もしまたどこかで取り上げて頂く頃には、確実に新しいネタ、進歩、そして夢や目標が出来てる事と思います。まぁそうそう取材などありませんしね(笑) ではご興味ある方はどうぞ! 


● 地元室蘭で、ジャズ・コントラバスをスタート 

北海道室蘭市出身、幼少期はクラシックピアノ、高校ではアコースティックギターやエレベを経験。 

実は高校の時からコントラバスに興味あり、吹奏楽部で体験させて貰ったことも。 高校卒業後、室蘭工業大学ジャズ研究会との出会いをきっかけに、ジャズ、そしてコントラバスの世界へと入ることになりました。 

室工大ジャズ研ではたまたま夜間生だったピアノとドラムの2人と意気投合しバンドを組み、部室は朝~夕方まで使い放題。 行動力とアイディア豊富なピアニストをリーダーに活動を続けてくうちに、2000~2010年まで開催していた地元のジャズフェス『室蘭ジャズクルーズ』の一般公募で選ばれ出演。(私はその後別バンドでも選ばれ3年間出演)  

その後地元での演奏活動をスタート。市内のみならず胆振各所で演奏の機会を得ました。 当初琴線というアルバムで衝撃を受けめちゃくちゃ憧れてたベーシスト納浩一さんとも室蘭ジャズクルーズをきっかけにお会い出来たのも、嬉しかったなぁ~緊張した。

そして札幌のベーシストでは瀬尾高志さん、粟谷巧さん、本間洋祐さん等とも知り合う。御三方は既にめちゃくちゃご活躍されてました。 特に瀬尾さんの出演する石田幹雄トリオ(石田幹雄 p、竹村一哲 dr)のライブは札幌までよく見に行ってて影響を受けてました。

その後、室蘭ジャズクルーズのご縁で、学生たちで高槻ジャズストリートでボランティア兼で数年出演。フライドプライドのお二人がこれまた優しくしてくれて、まさかの私たちの屋外演奏に突如現れ、まさかの飛び入りで参加してくれたりと、これまた想い出沢山!
また、サッポロシティジャズパークジャズライブに出てたのをきっかけに、とある元テレビ関係者の方とご縁があり、札幌の深夜番組のエンディングテーマをビデオ収録され、しばらく流されていた頃もありました。 

室蘭ジャズクルーズは勿論の事、後に出来たライブハウス(2年で潰れましたが…)ではスタッフをし、出演された東京のトップミュージシャンの方々を間近に見させて頂いたのも今も宝です。

とにかくまともにソロも弾けないレベルだったにも関わらず、色々と刺激もあり、地方に居ながらも良い時間を過ごしていました。 その一方、仲間が卒業していったり、地元では正当な評価が得られてない、ここでは成長出来ないと感じ、次第に札幌へ拠点を移します。 月に2回は札幌へ行き、ジェリコとアフターダークのジャムセッションへ必ず参加してました。 


●札幌へ引越し! 

引越しも早々に決め、とりあえず生きていくために、まず就職。1社目、とある会社の経理部門。 残念ながら私には向いてなかった模様。 おまけに超絶ブラック企業で、僅か3か月しか持たず。(3か月の間に新しく入った人が10人くらい辞めてましたw) しかし、その超絶厳しい女上司のおかげで、事務応対スキルを全てゲット。 そのスキルを携え、2社目、とても良い会社に営業事務として無事就職。 のち約8年間在籍し、退社。 

その間、最初はアマチュアだった私も、年を追うごとに気付けば完全に〝二足の草鞋生活”に。 慢性寝不足に練習不足で大変でしたが、若さでなんとか乗り切っていました。 

音楽の方はというと、地元では正当な評価を実感出来ず辛い日々でしたが、徐々に室工大時代に知り合ってた北大ジャズ研の人と再会したり、セッションで出会った方々とライブしてるうちに、年100本はライブをやるように。 今までの苦労は何だったのか(笑) 


●ラテン音楽との出会い  

2012年に一回目の転機が訪れます。 当初付き合ってた現在の夫でありサックス奏者の村川佳宏が少し前から参加していたラテングループに私も参加することに。 

リーダーは札幌を代表するラテン及びジャズピアニストである市川芳弘さん。 奥様は東京で第一線で活躍しているラテンボーカリストMasayoさん。 このお二人によって、見たことも聞いたことも無い、キューバンラテンをしこたま教えて貰います。 トゥンバオ?クラーベ?ソンはどうやってベース弾いたらいいの?ていうか曲名読めない。。ってところからスタートし、まもなくして数々の地元や東京の一流ミュージシャンと共演することになりました。 本当に当初ラテンが苦手になり、泣きながらやっていたのですが、辞めなかったのはただ、悔しかったから(笑) 

でもそこで得たことはラテン音楽だけではありません。 音楽をステージをやる者としての様々な重要なことを、特に東京で第一線で活躍してる方々に直々に教えて貰うことになります。 それが次のステージへ、私や村川氏を連れて行ってくれることになります。 


●サッポロシティジャズパークジャズライブコンテスト2013優勝!トロントジャズフェスティバル出演!!

2013年北海道最大のジャズフェス、サッポロシティジャズ、パークジャズライブ2013コンテストにて、村川佳宏Quartettにて出演し、グランプリを受賞。 2014年6月上記優勝バンドとして、カナダトロントジャズフェスティバルへ出演。 

今だからぶっちゃけますが、正直自分自身は全力を尽くしたものの、優勝するとは思ってませんでした。 なぜなら、ここ数年は東京の音大出身者にことごとく優勝を奪われていたからです。(音大出身とかほぼプロやん!笑) 

まさか20代半ばで海外のジャズフェスで演奏する日が来るとは思いませんでした。 

そして今でも異例と思いますが、当初メンバー全員ガチ会社員&一人学生。 今は更に競争率が高まってると思いますので、多分後にも先にもこのような優勝バンドは出てこないかもしれませんね。 そのくらい奇跡的に魅力的なメンバーの集まりだったのではと思います。勿論喧嘩もしたなぁ(笑) 今でもこのバンドは仲良しです(笑) 

勿論海外での演奏も好評。動画がYouTubeに残ってますのでご興味ある方はどうぞ!(Demo CDも販売してます!サインします!) 


●行き詰まりを覚える。基礎からのやり直し。そして遂に会社員を辞める  

若さと勢いだけでやってきた20代も後半に差し掛かり、結婚もし、正社員勤めと家庭と音楽の両立もキツくなってきました。 勢いと負けず嫌いだけでやってきましたが、見渡せばだんだんと任される演奏のレベルも高まってきます。 

勿論、今まで誰かに師事した事も無く、独学でしたし、勢いと経験だけでやっていたようなもの。 

そこでアルコ(弓)奏法や、ちゃんとクラシック的なフォームを身に着けたいと興味を持ち始めていました。 フォームも時々誰かに教わっても、なんだかしっくりきていず(多分男女の体格の違いなど)、フォームジプシーを脱却したい。 

そして色々限界で、引越しを期に遂に退社! 


●クラシックと師匠との出会い  

夫の両親が30年間続く札幌のとある吹奏楽団の創立からのメンバーだったのですが、そこのコントラバスの正規メンバーが居ないと。 そんなにジャズ弾けるならできるよー!と軽く誘われて(←いや、普通に出来ません!笑)、勉強の為と、家族ぐるみで仲が良かった団員の皆さんにも興味あり、思い切って団友のような形で参加。 吹奏楽も通ってこなかったですしね。

初めは単発レッスンで別の先生にアルコを習っていましたが、遂に札幌のクラシック界でも一部ジャズ界でも一番有名な先生と出会います。 その方が元札幌交響楽団首席奏者、藤澤光雄先生です。 

この方に習っていたのはクラシック界だけではなく、実はジャズ界で有名な瀬尾高志さんや加藤真一さんも習っていたという方。(他にも沢山いました) 

現在先生は現役札響ではない為、生演奏を聴く機会がとても少ないのですが、なんとか聞く機会を得ました。 その時驚いたのが、音色の美しさ、弾き姿、そして曲の理解と圧倒的な表現力とセンス。そして、音が遠くまで一番聞こえてきます! クラシック初心者の私が見ても、周りと圧倒的に弓さばきや美しさが違うのが一目で分かるのです。 そこで知人に紹介して貰い、遂に週一レッスンを受けることに。 


●音楽一本になって、益々幅が広がる日々

本当に有難い事で、おかげさまであっという間に沢山の素晴らしい機会を得ました。 

アマチュアの方との演奏も多かった数年前から一変して、プロの方との演奏の機会がぐんと増えました。 そして練習もいつでも出来る環境に。本当に良かった。。  

まずやりたいのはジャズのプロミュージシャンとして認められる存在になる事は勿論。 その一方で、今まで辛く悩み続けていたフォーム等の改善を始めとするコントラバスの基礎をとにかく徹底的にやろうと。 ちょうど藤澤先生にも習い始める事が出来たのをきっかけに、クラシック練習がめちゃくちゃ増えました。 というか週一レッスンだし、練習せざるを得ません(笑) 

とにかく基礎にしても何にしても、日々の積み重ねが大事ですね。週一レッスンで良かった。。

実はアルコに興味を持ったのはマークジョンソンの弓を聴いたのがきっかけでした。 古いジャズベーシストなら一番好きなのは今でもやはりポールチェンバースなのですが、彼の弓は周知の通り。(それはそれで好きですが!) 

マークジョンソンの弓は美しくて、私もジャズで弓で弾くならこういうプレイヤーになりたいと思ったのがきっかけでした。 なので、美しく音楽的な藤澤先生の演奏にも魅了されたんだと思います。 

今注意深く聞いても、やっぱり海外のジャズミュージシャンはクラシックの教養がめちゃくちゃあります。(弓さばきと表現力、ピッチを聴いたら一発で分かる) なので、海外に対抗する意味ではありませんが、私もそういうミュージシャンの在り方でいたいと思っています。 

実際クラシックも楽しいし、技術は実用的だし、時々オケや吹奏楽も参加する事が出来て、楽しみ喜び2倍ですよ!笑 (練習は鬼のように大変だけど!笑) 

特に弓で弾く弦楽器はクラシックの音色が半端なく美しい。 コントラバスやってて、これを体験しないのはもったいなさすぎる! ぜひ皆さんも一度はこちらの世界へどうぞ!笑 

特にほぼ弦楽器だけで合奏するオーケストラのハーモニー美しさ。フレットレスだからこそ実現する倍音の世界です。それも素晴らしい技術と素晴らしい曲で。
まずはとにかく、勿論私はジャズミュージシャンなので、先生がもうレッスンはやらない!と言わない限り、私はこれからも習い続ける事でしょう。一生かかっても先生の技術と感性は学ぶ価値ありです。 


●ジャズの勉強の場はここ

ジャズも勿論沢山の刺激と機会を得ています。 札幌の各ライブハウスでの演奏は勿論ですが、現在主に私の中で主軸を置いているのが、札幌の老舗ジャズライブハウスでピアニスト福居良さんのお店として有名である『Slowboat』、そして2019年秋に出来たばかりの渡米40年という経歴を持つギタリスト笹島明夫さんのお店『Living Room』。 

 

まずSlowboatですが、実は昔は全然行ってませんでした。バップ中心のとにかく厳しいお店という印象が強く、なかなか勇気がでず。 。しかし出演する機会が出来たことをきっかけに、定期的に出れるようになりました。 

残念ながら出演するようになり、まもなくして良さんは亡くなってしまい、私は1度セッションしたきり。 良さんの弟子でもなかった私ですが、お店にも温かく受け入れて貰えて、今も色々なバンドで出演出来る事は刺激になっています。 

そしてSlowboatファンの方々やミュージシャンの優しくも厳しい目もまた、私にとっては有難く貴重な場。 私はそんなに出番多い方じゃありませんが、非常に大切に思ってます。 ベースが生音なのも好き! 


次にLiving Room。こちらは2019年9月に出来たばかり。 実は笹島さんの演奏はもともと好きで、アメリカから時々来てのライブ、しかも海外のミュージシャンも沢山連れてきてくれてたのでよく聞きに行ってました。 出会ってから数年の間は私もただのお客さんでした。 しかし、何かのきっかけで演奏の機会を貰い、本格的に一緒に演奏の機会があったのは今から一年くらい前。 

私も元々スイングしなけりゃ何を弾いても意味が無いとずっと思っていたので、笹島さんの教えはとても私にとって重要な事ばかりでした。 その後ルスツで3日連続演奏の機会を貰ったり、その後天野昇子さんなど素晴らしい方々との共演の機会も。 秋にお店がオープンすることになり、それからのスペシャルライブとデイリーライブの定期的な演奏経験は何にも代えがたい財産となりました。 

Gene Jacksonさん(dr)とDavid Berkmanさん(p)が同時に来札の際は、世界レベルの人たちしかいないバンドを経験出来たりと、私も運が良すぎます!(笑) 

ジャズだけじゃなく、ブラジアンシンガーのNeusaさんと、パーカッションの木川保奈美さん等と、5日連続演奏したのをきっかけに遂に本物のブラジリアンの心地良さまで知ってしまう!NeusaさんのCDは今でもヘビロテで聴いてます。 

どちらのお店も共通してることは、ちゃんと方向性があり、演奏の機会も多い事です。
こんなに忙しくても1~2年に一度きり、というバンドも多い中、高いレベルで同じ人や曲を継続してできる事は有難いです。
そしてやはり黄金時代のジャズが好きなのもあり、今はとにかくその勉強に重きを置きつつ、さまざまな現場を、柔軟な感性で演奏が出来るように心がけてます。


●ジャズ以外は?ラテン音楽の密かな野望。。  

ラテン音楽では、今El Mangoというお店が中心となって演奏の機会がありますが、全体としては機会がかなり少なくなってきてる状況。そんな時に2019年秋、とあるご縁でアメリカ在住のキューバ人ピアニストMichelle Fragosoさんと共演の機会が。 

実は一番最初にラテンの世界に引き込んでくれた市川さんとは今も定期的に演奏の仕事の機会があるのですが、市川さんとのDuoって本当に自由で、ラテンとジャズを行ったり来たり、自由に遊んで演奏してるんです。ジャズの曲がバラードからボレロになっても、何にも驚きません(笑) 私たちにとっては当たり前ですが、実はそういう感じで自由に演奏する人って少ないと思います。 それの最上級がまさにMichelleとの演奏だったのです。勿論本物のキューバンラテン!

これはもう本当に奇跡の出会いだったと今でも思います。 あの時どれだけ楽しかったことか!!!(準備は大変だったけど 笑) 

いつか私ももっと上手くなって、彼と一緒に録音してDuoのCDを出したいというのが今の密かな目標です。 勿論ジャズの方もいつか自分名義、又はバンド等でCDを出せる日が来たらいいなと思ってます。 

また今回ジャズ批評にもCD紹介で載せて頂きましたが、愛媛在住のピアニスト青野和範さんと札幌のミュージシャンとで一緒にやってる青野和範Sapporo Quartetも、とても個性があり良いバンドで大好きなバンドなので、こちらも精力的にやっていきたいと思っています。 青野和範Sapporo Quartetの演奏もYouTubeに載ってますのでぜひ!CDもぜひ! 


●おわりに

長くなりましたが、2020年3月現在の伊藤未央とはこんな人です。

間近で演奏聞いたことのある人なら何となく、伊藤未央ってこんな感じね~ってお分かりの方も多いと思いますが、上記のとおり、私って変わった経路を辿ってきたミュージシャンだと思います。 

今回大きなの雑誌でのインタビューを経て、あまりにも変な経歴が多すぎてインタビュアーを困らせてしまったのではとも思います(笑)

なので〝こういうミュージシャンだ″ って自らが伝えて行かなければいけないとひしひし感じたのもあり、今回は自己紹介ページ作らせて頂きました。 これからも態度で、そして演奏で、伊藤未央とはこういうベーシストだ!とみんなが分かるようなミュージシャンになって行かねばならないと思っています。  

最後に軽くまとめると、伊藤未央はどジャズが好き、ジャズの根底の大切なものを尊重しつつ、現在に生きてるミュージシャンとしてどんな曲も柔軟な演奏をしていきたいと思ってる。機会があれば何でも挑戦し、時にはクラシックやラテン、ブラジル音楽からもインスピレーションを受けて、ジャズで表現するし、その逆もしたい。そしてとりあえずかなり幸運。あと意外と真面目。って事ですかね。 まとめても分かりずらいっすね!笑 良い表現があったら誰か教えて下さい!笑


札幌にお住いの方は勿論、道外の方もぜひ、ライブへ足を運んで下さり、応援頂けたら嬉しいです! そしてミュージシャンの皆さまも、これからもどうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m 

長文お読みいただき、ありがとうございましたー!! 


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